イベントレポートVol7
2011年3月11日の東北地方太平洋沖地震で被災されました皆様に心よりお見舞い申し上げると共に、一刻も早い復興をお祈り申し上げます。
この震災ではたくさんの方が住居や家族、友人、職場、思い出等多くのものを失いました。住居や食事などライフラインの早急な復旧は勿論のことですが、被災された方の心理的サポートが重要であり、そのサポートの一端を担っているのが臨床心理士の方々です。沢山の臨床心理士の方が被災地で活動されているのを皆さんも既に報道で目にしていることと思います。又、ストレス社会と呼ばれる昨今、うつ病やPTSDといった精神的な問題に対しての心のケアが重要となっており臨床心理士のニーズも年々高まっております。
今回は、その臨床心理士という立場から当協議会のサポートを行って下さっている谷中みゆきさんにお話しを聞いてみたいと思います。



Q.普段は札幌医科大学病院で勤務されている谷中さん。
 札医大での普段の仕事内容は?

各診療科の医師からの依頼を受けて心理検査やカウンセリングを行っています。たとえば、精神症状の把握や症状とストレスとの関係、認知機能の評価など状況に合わせて心理アセスメントを行っています。また、問題や悩みを抱えている人、不安や緊張・抑うつ感などの精神的な症状を抱えている人の話を聞き、症状の軽減や問題解決への支援を行っています。

Q.臨床心理士になったきっかけ(理由)
大学で心理学を専攻し、心理学に興味を持ち、それを生かした仕事をしたいと思いました。また、子供の頃から人の出入りが多い家庭で育ち、色々な人の話を聞くことや話すことに面白さを感じていたこともあったと思います。

Q.今回ドナーやドナー家族とのアセスメントを担当することとなったが、それまでの臓器移植に対する関心や意見は?
相談窓口担当になるまでは、一般的な事柄や情報としてしか臓器移植については考えていませんでした。医学の進歩に伴って臓器移植が可能となってくることは感じていましたが、移植医療に自分が関わっていくことになるという意識や実感は少なかったと言えます。今回、自分が引き受けることになって初めて身近な問題として考え出したというのが本当のところです。

臓器移植について知っていくうちに、これまで心理的・精神的な問題を抱えている方を中心に関わっていたため、相談する場所や精神的な支援が少ないように感じました。相談窓口担当者としては、そのことについて話をしてみたい方や相談したい人が気楽に話をできる場所となり、一緒に考えていける場にしていきたいという気持ちを強く持ちました。

Q.当協議会の会議などに出るようになり、臓器移植へのスタンス(見方)は変わりましたか?
北海道の進んでいる移植医療の現状を知ると共に、多くの方々が移植医療推進のために活躍・協力されており、本当に広い分野での対応や協力が必要であるということに驚きと感心を抱きました。

Q.臓器提供を決断したドナー、ドナー家族への思い
身内の死という辛い状況や時間のない中で臓器提供を決断したドナーやドナー家族の決断に人への思いやりや優しさ、
勇気を強く感じています。

Q.新たな領域のクライアントとの面談になるが、具体的な相談のイメージは?
(どんな面談になるのか、カウンセリングの進め方)

カウンセリングでは1回50分程度の時間を取り、お話を聞きます。時間的にも話す時間がゆっくりあります。その中でご自身の気になっていることや、心配なこと、迷っていることなど話して頂くことによって、自分の心の中にある辛い思いなどを1人で抱え込まなくてよくなり、気持ちが軽くなることも多いと言えます。また、自分の頭の中だけで考えていると、ある時から考えが堂々巡りをしやすくなりますが、人に話すことで自分の考えや気持ちがはっきりみえてきて、色々な角度から物事を考え直すこともでき、気持ちや考えの整理がしやすくなっていくと考えています。  カウンセリングでは、臨床心理士が自分の考えや価値観を押しつけることはなく、ご自身が結論を出せることが一番納得のいくことと考えており、自分自身で答えを見出せるようにお話を聞いていくようにしています。対象となる方は、悩みや問題のある方はもちろんですが、ちょっと気になることや話したいことがある方にも利用して頂きたいと思っています。カウンセリングの継続については、1回で十分な人もいると思いますが、何回かに渡ってお話を聞く場合もあり、状況に合わせて利用して頂きたいと考えています。

1)1回50分程度。ゆっくりお話をお伺いできる。
2)臓器提供後に様々な気持ちが起きてくるのは自然なこと。
3)様々な気持ちが動き、戸惑うこともあるかもしれないこと。
4)そのようなときは気軽に利用してほしい。

Q.パーソナルコミュニケーションの専門家として、今後の取り組みや、支援の可能性について
(こんなことができれば…、こうして欲しい…など)

悩みの多くは対人関係での問題が多いと言えますが、人は人間関係の中で癒され安定を得て行くことも事実です。人間関係の改善や安定に向けて、相談を受けることや支援をしていきたいと考えています。


谷中みゆきさん
「北海道生まれ。大学卒業後は、札幌医科大学心理学教室の研究生となり、
その後、札幌医科大学付属病院に勤務。
この他、スクールカウンセラーや他の相談業務なども受け持つ」


当協議会のインタビュー依頼に快く応諾して下さった谷中さん。札幌医科大学病院の職場にて色々なお話を聞かせてくださいましたが、臨床心理士の豊富な経験からか何でも聞いてしまいたくなる雰囲気を作って下さり、こちらの質問に一つ一つ優しく丁寧にご返答して下さいました。その中でも「話す中であらためて考えていくという機会を・・」という言葉が印象に残りました。一般的に相談と聞くと解決策や解答を導いてくれるものだと思われがちですが、話しをすることで、自分自身を分析し、理解し、整理をし解決するというプロセスをアシストしてくれるのがカウンセリングということだと今回わかりました。悩みや不安を抱えると一人ではどうしても同じ思考を巡らせるばかりですが、何も先入観がない第3者に話すからこそ、そして誰かに知られるという不安がない環境で話をすることで、より自分自身の思いを引き出すことができると言えます。

当協議会では臓器提供を決断したことにより精神的葛藤を抱えるドナー・ドナー家族の為の相談窓口を昨年の12月より開設しております。