イベントレポートVol18
旭川会場では、旭川医科大学教授の古川博之(ふるかわひろゆき)先生が講演して下さいました。先生は、アメリカのピッツバーグ大学で移植医療を学び、帰国後、北海道大学病院で肝臓移植を沢山経験されてきました。昨年の1月からは旭川医科大学の教授に就任され、旭川の市民の皆さんにも地元で移植医療ができるようになればと活動されています。そんな古川先生からは、移植医療の基礎知識と、我が国の現状について語られました。又、旭川医科大学病院で初めての臓器提供が今年の1月14日にあり、提供された臓器が3人のレシピエントに移植され、それぞれ順調に命をつないでいるとの報告をされました。ドナーとなった娘さんのお母さんがレシピエントやそのご家族にあてた手紙も紹介され、その中には娘を亡くした辛さ、娘の臓器がレシピエントの中で生きていることを嬉しく思っていること、そして娘の分まで長生きしてほしいと心から願っているとの言葉が綴られていました。旭川で臓器の提供がありましたが、旭川市民が臓器を受け取る側ともなり、臓器移植というのはこのように思いやりと助け合いの医療であると古川先生は述べられました。

旭川会場も満席になり関心の高さを実感


司会を務めた松永アナウンサー

その後の座談会では、前述の朗読会で読まれた「ママ、ありがとう」の作者、各務優子(かくむゆうこ)さんと「おばけのマール」や「ツリー君」でおなじみの絵本作家なかいれいさんも加わり移植医療について、それぞれの立場からそれぞれの思いを語られました。お母様を亡くされているなかいさんからは、癌が肝臓に転移した時にふっと思ったことは、肝臓を取りかえることはできないのかということだった。でも一方で、最期、人工呼吸器をはずす時になり、母はまだ生きているのにまだ外せないと思った、気持ちが揺れ動いた。と、臓器を受け取る側の気持ち、臓器を提供する側の気持ち両方を知りましたとお話されました。各務さんは、父親は医療にも関心が高く、亡くなる前にこうしてほしいときちんと伝えてくれていたので家族としては悩むことがなく、非常に楽だったとおっしゃいました。残された家族にとって、亡くなられた本人がどういった意思をもっていたのか、特に臓器提供をいう場面ではその判断に苦しまれる場合が多いのが現状です。本人の意思が決断の支えともなるので、日頃から家族で命について話し合うことが重要なこととなります。各務さんは、息子の宗太郎君に病気のことはなんでも話すようにしていたので、移植のことについても話をしたとおっしゃっていました。なかいさんも子供の頃から「命」について学ぶことは大切。絵本を通じて、学校でもディスカッションをする場があればよいのではと言及されました。そのなかいさんからは、人の役に立ちたいという心や思いやりなど臓器移植と通ずるテーマで描いた絵本「ツリーくん」の読み聞かせもして頂きました。

右から古川先生・なかいさん・各務さん


なかいれいさんによる「ツリーくん」の朗読も


宗太郎君をテーマに書かれた詩を読む各務さん

続いて登場したのは、鳥居大祐(とりいだいすけ)さん。鳥居さんは、現在パリを拠点に音楽活動をされている旭川出身の新進気鋭のピアニスト。2008年11月に急病に倒れ、札幌で座談会に出演されたお母様の裕美さんの腎臓の片方を移植した、いわゆるレシピエント。今は元気に音楽の勉強に励んでおり、今回、ご自身で作曲された曲も含み素晴らし演奏を披露して下さいました。

又、主治医である札幌北楡病院の玉置 透(たまきとおる)先生からは、当時の様子や将来がある若いピアニストがゆえに色々と治療を工夫されたとのお話を聞かせて頂きました。臓器移植は手術をしたらそれで終わりではなく、免疫抑制剤を飲み続けなければならなかったり、主治医の先生とのお付き合いが続きます。二人の様子からは、主治医と患者の固い絆がうかがえました。

ピアニスト・鳥居大祐さん

鳥居さんの主治医でもある当協会・玉置先生

今回、当協議会の旭川支部が立ち上がりました。その支部長として旭川医科大学学長の吉田晃俊(よしだあきとし)先生にお引き受けいただき、この公開講座はその第一歩となりました。旭川をはじめとして、道東・道北の皆さんの為にも今後、救急医療・移植医療の活動を広く進めて行きたいという吉田先生の力強い言葉が印象的でした。

旭川医大・吉田学長


まだまだ進まない日本での移植医療ですが、このような公開講座をきっかけとしてこの北の地から少しずつ理解が広がっていけばと願っております。又、同時に、道民の皆様が大切な人とかえがえのない「命」について話し合うきっかけになれば幸いに思います。ご協力頂きました出演者の皆様、ご来場頂きました皆様、そして今回この会を主催してくださった北海道の協力に心から御礼申し上げます。ありがとうございました。

閉会の辞は当協会・藤堂先生より




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